石灰とは、生石灰と消石灰の総称。用途としては上・下水道用、食品添加物用、肥料用、鉄鋼用、化学用、土木・建築用、公害防止用など幅広い用途で使用されている。日本は石灰の原料となる良質の石灰石に恵まれており、国内で自給自足出来る数少ない貴重な資源となっている。
用途別出荷量を見ると、鉄鋼業が全体の約半分ものシェアを占める。鉄鋼を製造する際に、鉄に含まれるシリコン・硫黄などの不純物を除去するための触媒として生石灰が不可欠で、石灰製造業の業績は鉄鋼業の動向に大きく左右される。経済産業省の「平成16年工業統計表」によると、4人以上従業員を有する事業所は135ヵ所、従業員数は3769人となっている。
主要関連業界である鉄鋼業向けの需要が伸び悩み、石灰の生産も落ち込みが続いていたが、鉄鋼業界は不況から立ち直っており、用途別出荷量で約4割のシェアを占める化学工業も好調である。そのため、平成11年には819万トンにまで落ち込んだ石灰生産量も、15年には959万トンまで回復した。
依然として生産は堅調な動きを見せているが、原油の高騰がもたらす影響の大きさが不安となっている。中でも製造コストの約4割を占めるLSC(低硫黄)重油の価格高騰は、製品の値上げにもつながる深刻な問題であり、今後の原油市場の動向が気にかかる。
鉄鋼依存の体質から脱却を図るため、新商品と新技術の開発に努め、鉄鋼以外の分野の需要も年々増えており、最近では鳥インフルエンザの防疫や飲料水の細菌病原体除去にも効果があるとして注目されている。今後も既存商品の品質改善や新用途の開拓、新製品の開発を行うことで需要を喚起したいところだ。
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