豚肉は、主要食肉の中では比較的安価で、ビタミンなど栄養価にも優れている。豚は繁殖力が旺盛なために、養豚業は生産性の高い業種であるといえる。農林水産省の調査では、平成16年2月現在の飼養戸数は8880戸(対前年比94.2%)と減少しているが、豚の飼養頭数については約972万4000頭と、前年とほぼ変わっていない。
毎年約150万トン前後の水準で推移していた豚肉の出荷量であるが、平成13年のBSE発生や平成16年の鳥インフルエンザの発生等による家計消費の代替需要が起因し、平成14年以降は高めで伸長している。また「豚丼」に代表されるように、外食産業からの需要も急速に伸びた。平成17年の出荷は172万トンとなり国産品と輸入品でほぼ等分となっている。
消費用途は家計消費で約4割・加工品向けで約3割・その他(業務用・外食用)で約3割というバランスが数年続いているが、今後はハムやソーセージなど、加工食品としての消費ウエイトが市場に与える影響を大きくしそうな業況であると考えられる。ちなみに日本ハム・ソーセージ工業協同組合の調査によると、平成17年における食肉加工品(ハム・ソーセージ・ベーコンなど)の年間生産数量は約49万3800トン(前年比98.1%)となっており、ここ数年は大きな落ち込みもなく安定した推移が続いている。
後継者不足などの理由から国内の養豚業は縮小の一途をたどり、飼養戸数もこの10年で半減しているが、飼養頭数自体は微減にとどまっており、養豚業者の大規模化が進んでいることを示している。スーパーや食品メーカーが卸売市場を通さず、直接養豚業者と取り引きするケースが増加し、一定の供給量を確保する必要が出てきていることが経営規模拡大の一因となっている。政府の補助金制度が米や大豆と同じく大規模養豚業者に限られることになれば、より一層の集約化が促進される可能性があり、今後の動向に注目が集まる。
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