かつて季節感の強い食べ物だった果物も、温室栽培などによる技術の向上や品種改良の効果、缶詰や菓子類など果実加工品の流通増、さらには輸入の自由化で海外からの輸入量が大きく伸びたことなどによって、現在ではほとんどのものが一年を通して手に入るようになった。

果樹作の大きな特長として、結実までの年数が長いこと、一度植えつけてしまうと改植が難しいこと、土地の基盤整備に投資が掛かることなどが挙げられる。このため、一定期間の資本維持を考慮した経営が肝要となる。近年は経営者の高齢化や後継者不足が深刻となっており、生産量の推移に与える影響が年々大きくなりつつあるのが心配である。農林水産省の統計によると、平成18年の果樹栽培面積は、おうとう、うめなどの数品目を除く、ほぼ全ての品目において前年を下回っている。
果物は収穫量の地域差が野菜以上に出やすい作物であり、各地の名産品についてはそのブランド力が人気へとつながるメリットもある。全果実の輸入自由化によって国際競争力が問われている現状だが、豊富なビタミン類を有する機能性食品としての認知向上を追い風に、消費拡大のPRを強化することが必要となるであろう。
青果をはじめとする生鮮食品の販売チャネルが、コンビニエンスストアや価格均一ショップを中心に広がりつつある。果物についても手軽に購入できる機会が増えたことによる消費の促進が期待されるところだが、税込105円均一など安価で売られているものについては輸入品が多くを占めるのが現状だ。販路の拡大が認知されていくにつれて品質や安全性に対する消費者の志向が高まっていけば、商品単価が若干高くなったとしても国内産果物の需要につながる可能性は十分にあるといえる。