明治時代の始まりとともに、日本における鉄道の歴史も幕を開けることになる。明治5年の開業(新橋〜横浜)当時はイギリスから機関車を輸入して運行されていたが、明治8年に神戸で国内初の車両製作が行われて以降、国産車両の普及が進んでいくようになり、鉄道網の発達によって車両や部分品の製造業も大きく栄えていった。
経済産業省の「工業統計調査」によると、平成16年現在で「鉄道車両・車両用部品製造業」事業所数は324(従業者4名以上)、年間出荷額は約5000億円となっている。事業所については年によって大きな増減が見られており、部品製造についても車輪、ブレーキ、連結装置、電気機器など様々で、種類ごとに国内需要および輸出入の規模もそれぞれ異なるが、全体的に見れば安定した増加傾向が続いている。
また社団法人日本鉄道車輌工業会のデータでは、平成16年の車両生産実績は2383両で、前年より600両近く増加した。需要先としてJR在来線が最も多く、輸出車両も全体の1〜2割を占める。
平成17年以降相次いでいる列車事故の影響によって車両の安全性を問う声が大きくなっている上に、海外メーカーからの輸入攻勢も年々活発になっていることから、国内市場は今後も安定した需要を維持できるかどうかの段階に差し掛かっている。
欠陥部品を出さない安全性はもちろん、年々進む鉄道の高速化に対応した技術や、低騒音、低公害、リサイクル素材の使用といった環境面、さらにはバリアフリー化への配慮も大切な要素となるだろう。車両内についてもJR東日本では既に普及している液晶画面を使った情報サービスなど、IT技術の活用も全国的に広がっていくものと思われる。古くからの日常的な交通機関を乗客が安心かつ便利に利用できるよう、その役割は時代とともに大きく、重くなっている。
環境負荷が比較的少ないことや、大量輸送手段としての鉄道の優位性が見直されていることなどから、北米や中国をはじめとしたアジア諸国を中心に鉄道車両の需要が伸び続けている。日本の製造技術は世界的にも高い評価を受けており、国外からの受注も好調である。
しかし海外での鉄道事業において、システム採用や車両購入はその国の政府機関が行うことが大半。今後、他国の鉄道産業に対抗し受注を獲得するには、鉄道受注を国家プロジェクトと位置付けるように日本政府へ働きかけ、後方支援してもらうことも必要となってくるであろう。
《業界情報サイト》
◆◆ 交通バリアフリー法 ◆◆
平成12年11月施行。正式名称は「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」。高齢者、身体障害者などの公共交通機関を利用した移動の利便性、安全性の向上を促進するため、駅などの各ターミナル施設および車内、船内、機内のバリアフリー化を推進する。
◆◆ WVIT(ウィット) ◆◆
JR東日本が日本テレコムと共同で開発を行った、中吊り広告を液晶モニターで表示するシステム。試験運用を経て現在はJR京浜東北線の車両に設置されている。広告のほか、ニュース映像などの配信も同時に行われている。