かつては多くの小学生が通い、習い事の代名詞でもあったそろばん(珠算)塾。指先と頭脳の連動によって集中力や計算力を養い、右脳の発達に大変効果があると医学的にも証明されている。総務省統計局の「平成16年サービス基本調査」によると、「そろばん教授業」の事業所総数は8267ヵ所。前回調査(平成11年)の1万1531ヵ所から3割近い大幅減となった。全国の事業所のうち個人による経営は94%にのぼるが、開業に際して資格の必要性や法規制を一切持たないのがこの業界の特色といえる(講師資格の制度は存在する)。総収入は年間約234億円で、前回調査比67.4%。業績悪化の度合いはかなり深刻である。
電子計算機やパソコンの普及によって計算処理能力が大幅に上がり、日常においてそろばんの需要は大きく低下した。平成14年4月から施行された新学習指導要領においても、小学校3、4年で実施されていたそろばんを使った授業が、3年のみに削減されている。そろばん塾においても指導者の高齢化は大きな問題であり、後継者育成の面でも何らかの対策が必要な状況にある。
そんな中、いま一度子どもたちにそろばんの魅力を知ってもらおうという新たな試みが各地で始まっている。大分そろばん指導協議会では、講師ボランティアが市内の小学校に出向いて児童を指導する「そろばん講師派遣事業」を平成15年から始めた。平成17年には大分市内の小学校35校に派遣を行い、学校側からの評価も高いという。
大阪府珠算教育連合会でも、学校教育におけるそろばんの普及を活性化する目的で、府と市の教育委員会が主催する「大阪府学校支援人材バンク」のシステムを活用した珠算講師の派遣を平成13年からスタートしている。学校教育と連携したそろばん教育の活性化に向けた取り組みが、業界の再認識を促すだけでなく、子どもの知能発達、育成におけるそろばんの効果をアピールする結果につながることを期待したい。
《業界情報サイト》
◆◆ 珠算名人位決定戦 ◆◆
日本珠算連盟主催。珠算の高段者が一同に会し、計算技能を競い合い日本一を決める大会で、2年に1度開催されている。
◆◆ フラッシュ暗算 ◆◆
頭の中でそろばんを弾きながら計算していく珠算式暗算の練習目的で作られたもの。画面に短い間隔で数字が次々に現れ、その合計を計算する。そろばんの技術を向上する目的もあり、暗算力、集中力が鍛えられる。