沿岸漁業とは主に、2人乗り程度の小さな漁船によって近距離で行う日帰り漁のことをいう。ノリや真珠、ハマチといった養殖の海産物からサケやブリ等の定置網漁まで含まれるが、そのうち海面漁業に限定すると、魚類のみが対象となる。

沿岸漁業は国内漁業の大きな柱であるが、近年は就業者数が減少傾向にある。その大きな要因には「後継者不足の問題」が挙げられ、家族経営を主体としたこの業界では事業の継続を左右する。また同一魚種を通年捕獲できる漁業者は少なく、端境期に他魚種を捕獲できる体制にあるかは重要なポイント。1年を通じて稼動できない漁業者は、閑漁期に他の仕事を組み入れるなどの対応を強いられることになるが、魚種によっては1年のうち数ヵ月の操業でも十分な収入を得られる場合もある。
日本沿岸の水産資源は一部の魚種を除き、横ばいもしくは減少傾向にある。そのため資源数の減少に伴うTAC制度やTAE制度のような管理措置以外にも、「獲る漁業」から「つくり育てる漁業」に方向転換し長期的な漁業の発展を目指す動きが全国的に行われている。これにはバイオテ クノロジー技術の進歩も追い風となり、次世代に向けた漁業の改革として期待が高まっている。
「関アジ」「関サバ」のように全国的に有名なブランドとしての地位を確立したものもある。今後は漁協の指導のもと、地区の漁業者同士で一致団結し、活魚出荷や鮮度保持などでブランド力を強化し、東京や大阪などの大消費地での認識度を上げていく努力が必要となる。