室町時代の紺屋(染物屋)が副業として洗い物のサービスを始めたのが、日本におけるクリーニングの起源とされている。明治に入り、軍服や洋服の着用が一般に浸透していったことでドライクリーニングをはじめ西洋の洗濯技術への関心も高まり、昭和25年に「クリーニング業法」が制定されて以降、需要が一気に伸びることとなった。
クリーニングには、石油系溶剤を使ったドライクリーニングや水洗いによるランドリー、主に手洗いで処理するウェットクリーニングといった種類があり、素材の特質やデザインなどによって洗い方が決められる。日本においてはドライクリーニングの需要が多くを占めるが、温暖化等の問題に対する環境への配慮から、溶剤として使用されてきた特定フロンとトリクロロエタンの製造、輸入については平成8年より禁止されている。

厚生労働省のデータでは、平成17年3月現在、一般クリーニング所は全国に4万2664ヵ所。これに受付のみを行う取次所を合わせると、約10万8000ヵ所の施設がある。「サービス業基本調査(総務省統計局発表)」によると、平成16年の「普通洗濯業」年間総収入は約1兆4347億円。前回調査(平成11年)比で66.6%、金額にして約7000億円もの大きな落ち込みとなっている。
全国クリーニング生活衛生同業組合連合会の調べによると、平成16年の1世帯あたり年間洗濯代は9941円で、年間2万円近い数字となった平成4年のピークから半減している。核家族化の進行や単身世帯の増加といった要因に加え、家庭用洗剤の性能向上による業者への需要低下も大きく影響していると思われる。
市場が飽和状態にあって業者間の競争も激しくなっているが、業界全体で取り組むべき課題としては、24時間の受付・受け渡し体制やコンビニとの提携など、消費者に便利なイメージを与えるためのサービス拡大、クリーニング師の技術向上や新素材に対応するための調査・研究の充実など、衣料品素材の多様化によって増えつつあるトラブルを防止することで業界の信用度を高める努力、従来の石油系などに代わる環境保護や省エネルギー、安全性に配慮した新しいドライクリーニング溶剤の開発ならびに普及、といった具体例が挙げられる。
最近では衣服のリフォームやオフシーズンの衣類保管といった付帯サービスも進んでおり、広告やホームページなどのメディアによる積極的なPR、情報提供を広く認識してもらうことで、消費者のクリーニング業に対する利用価値が再び高まり、需要の回復へとつながる期待も決して低くはない。
クリーニング業では溶剤や包装資材など石油に関連した支出が多いため、世界的な原油高を受けて、一部商品の値上げや持ち帰り用ビニール袋の有料化など価格転嫁を行う業者が出てきている。家庭用洗濯機の普及や機能向上などで1世帯当たりのクリーニング費は年々減少しており、値上げによる消費者のクリーニング離れが危惧されるところだ。近年、業界では大手を中心に激しい値下げ合戦による顧客の獲得競争を続けてきたが、今後はボタンつけなど補修サービスの充実など価格だけでなくサービスの質向上で他店との差別化を図ることが求められてくる。
近年、衣料素材の多様化は著しい。そのため商品を預かる際に知識不足や説明が足りないため発生する、店員と顧客との間のトラブルが増加している。問題解消に向けて、業界140社で構成される
繊維商品めんてなんす研究会では、衣料知識や店頭での接客技術を検定する「クリーニング・アドバイザー制度」を設けた。業界ではクリーニング利用に対する需要は潜在的にあると見ており、接客技術の向上で業界全体のイメージアップを図り、需要の掘り起こしを狙う。
《業界情報サイト》
◆◆ クリーニング業法 ◆◆
昭和25年5月制定。新規開業には都道府県知事の承認ならびに衛生基準等の審査が必要となる。また国家資格である「クリーニング師」を置くことも、この法律により定められている。
◆◆ リネンサプライ ◆◆
ホテルや病院のシーツやタオル、飲食店のおしぼりなど、繊維製品を貸与し、その使用後に回収して洗濯し、再び貸与することを繰り返して行う事業。
(株)白洋舎 【東証1部】(http://www.hakuyosha.co.jp/)
(株)きょくとう 【ジャスダック】(http://www.cl-kyokuto.co.jp/)