平成11〜12年にかけての「カリスマ美容師ブーム」によって、才能ある美容師が所属するサロンに予約が殺到する現象が起きたのは記憶に新しい。最近ではトータルファッションとしての関心が高まっている美容業。そのニーズに応える形でエステティックやネイルサロンといった部門を併設する店舗が業績を伸ばす動きも見られている。
「サービス業基本調査(総務省統計局発表)」によると、平成16年の「美容業(エステティックサロン等もここに含まれる)」年間総収入は約2兆0218億円とされている。前回調査時の記録がなく、過去との比較対象が出来ないが、厚生労働省の「衛生行政業務報告」による数字では、平成15年度末時点での美容院数は21万0795店と、前年度末比で101.2%。10年前と比べれば2万店以上の増加となっており、市場は年々確実に拡大しているようだ。
近年では若年層の男性が美容院へ通う需要の流れがますます顕著になり、幅広い層の顧客を取り込むためには高いファッション性を持った店舗づくりが求められている。決して高い収益を得られる業種ではないことから、低料金設定で回転率を高める経営を行っている店舗もあるが、短絡的に料金を下げることで安っぽい店舗イメージを作り上げてしまう危険もあるのがこの業界の難しい点といえる。
店舗数の増加によっていずれ訪れる飽和状態に対応するべく、他店との競合に備えてカット技術だけでなく、店内やスタッフの雰囲気づくり、ヘアメイク以外の付帯サービスや、インターネットや携帯サイトを使った予約サービスの充実などといった、顧客満足度を高める要素でリピーターを増やしていく努力によって、今後の業績アップにつなげていきたいところだ。
近年、カラーリングが人気を集めていたことなどもありパーマの利用率は減少傾向だったが、人気ファッションモデルが「巻き髪」を流行させたことで利用客数は回復しつつある。また従来に比べ髪が痛みにくいデジタルパーマや、事前に仕上がり具合のわかるバーチャルパーマなどが登場したことも人気回復にひと役買っている。しかし髪型は流行に左右される面が大きいため、客単価上昇に貢献するパーマの利用率が高い水準で推移するかは不透明である。今後、利益を安定させるには固定客をいかに増やすかが肝要となってくる。髪質、ファッションの好みなど細分化されたニーズに適応した顧客サービスの充実で激化する業界間の競争を乗り越えていきたいところだ。
《業界情報サイト》
◆◆ 美容師法 ◆◆
昭和32年制定。美容師は厚生労働大臣認定の国家資格であり、養成施設での修業期間(通常2年)を経て試験に合格した者が得られる。美容院の開業や営業時の衛生管理指導や規制についてもこの法律が適用される。
◆◆ ベスト・ヘア賞 ◆◆
全日本美容業生活衛生同業組合連合会主催。独自のヘアスタイルを保ちながら時代にふさわしい髪形を持つ女性芸能人に贈られる賞。平成13年より制定され、平成17年は女優の上戸彩が受賞した。
《参考サイト》
全日本美容業生活衛生同業組合連合会(http://www.biyo.or.jp)