海に囲まれた日本では、古来より魚介類が貴重なタンパク源として食されてきた。鮮魚小売業も流通の発展に伴い、全国各地の新鮮な魚介類を販売できるようになった。魚類に含まれる成分は健康への効果が大きく、メディアでも度々注目されているが、夫婦共働きが一般化し、核家族が増加するなど居住形態が変わってきた現代では、丸ごとの魚は調理に時間と手間を要するため敬遠される傾向にあり、スーパーマーケットなどで切り身の商品を買う家庭が増えている。

一般的に鮮魚小売店は閉店時間が早いため、仕事帰りに買い物をする兼業主婦には時間帯が合わず、足が遠のく傾向にある。一方でスーパーマーケットの中にテナントとして入店している小売店については業績が安定している。経済産業省の「平成16年商業統計調査」によると、「鮮魚小売業」商店数は2万3021店で、年間出荷額は約9486億円。既存の小売店が業績を落としているなどの影響もあり、減少傾向が続いている。
漁業規制や原油高による燃料高騰などが原因となって、国内の漁獲量ならびに輸入量の減少が止まらず、水産物の卸値は冷凍品も含めて上昇が続いている。今年に入ってからは毎月前年比の水準を上回っており、消費の低迷にも大きく関係しているようだ。BSE問題などによって牛肉、鶏肉を敬遠する代わりに魚の消費が増える傾向も欧州を中心に見られており、流通減が市場にもたらす影響は当分続きそうである。
鮮魚小売店のセールスポイントは対面販売であること。消費者とコミュニケーションをとりながら、販売できるのが一番の利点となる。スーパーマーケットとの差別化を図るには、若い主婦層に向けた魚のさばき方の伝授や旬の魚の調理レシピ作成、高齢者へ向けた宅配サービスの充実といったキメ細やかなサービスが必要になってくる。