
パン小売業は、一般にベーカリーと呼ばれる「製造小売」と「仕入販売型小売」に大別される。昭和30年代、パンの需要が伸び始めた頃には、大手企業の生産システムや流通が整備されてきたため、それを仕入販売する小売の店舗が大半を占めた。しかし昭和40年代に入って消費者のニーズが量から質へとシフトしたことで、焼きたてのパンを提供するベーカリータイプの店舗が消費者の心をつかんだ。
仕入販売型小売に比べてメリットの多い製造小売だが、新規参入が多く、競合も厳しい。国内のあらゆる業界に加え、海外企業の日本進出も増加傾向にある。またコンビニエンスストアでは、メーカーと提携を結び、1日数回の配送による新鮮な商品の提供を行っており、競争は厳しくなるばかりである。
現代においては消費者の嗜好も多様になり、食生活の西洋化によるパン消費量の拡大だけでなく、内容の多様化もますます進んでいく。それに対応するには、定番商品である食パンやあんぱん、メロンパンなどに加え、いかに他店との差別化を図れるバリエーションを用意できるかが肝要となってくる。
アレルギーがあるために、パンの原料である小麦粉や卵、牛乳などを口にできない消費者も多い。そんな中、小麦粉を食べることができない消費者にも安心して食べられるパンの原料として米粉が注目されている。一般的に小麦粉で作ったパンとは違ってもっちりとした食感に仕上がるが、あえてその食感を活かした惣菜パンを開発したり、素材や製法を見直すことで小麦粉のパンとよく似た食感に仕上げたりと、米粉パンのバリエーションも豊かになってきているようだ。今までパンを食べることができなかった消費者が口にできるパンを開発することは、他店との差別化だけでなく新たな需要の開拓という点においても有意義なのではないだろうか。