
ネクタイとは首に装飾として巻く布のことで、「結ぶ」という意味のタイ(tie)と呼ばれるのが一般的だが、俗称でスカーフと呼ばれることもある。国内においては製造業者の8割以上が従業員20人以下の零細企業で、年々事業所数も減少傾向にある。
昔から景気の良し悪しに比例する形で市場規模が変化してきた業界であるが、最近では消費者のネクタイ離れや輸入製品の増加が進んでいる。ネクタイに対する1世帯あたりの年間支出額がピークと比べほぼ半額になっていることに加え、平成11年以降、中国を中心とする東南アジアからの輸入が急増。経済産業省の「工業統計表」によると、平成16年の国内生産高は29億4000万円。前年と比べれば1億円の上昇だが製品の出荷額そのものはほとんど上昇しておらず、原材料費などのコスト削減を推し進めた結果といえるだろう。それでも、平成11年の58億1100万円から50%近く生産高が下がるという厳しい状況が続いている。
素材や質の差によって付加価値を高めることは難しく、生産効率のコストダウンも限界に近いのが現状のようだ。さらに、平成17年に環境省が提唱した「クールビズ」の定着によって、夏場はノーネクタイという風潮が広まっている影響も業界にとっては少なくないようだ。海外からも安価な商品や高級ブランド商品が流入し、市場は二極化している。そのためこれまで以上に商品企画力を高め、購買層別に細かく戦略を立てる必要がある。
社会人の身だしなみ、そして正装の象徴的な装飾として用いられるネクタイだが、デザインだけでなく機能的に使える商品としてのアイデアも考えられている。特に外からでは見えない裏地に凝った商品も数多く出ており、単なるデザイン柄だけではなくメガネ拭きの生地になっているものや、最近では地下鉄の路線図が描かれているものも売られており、ビジネスマンに人気のようだ。着けるだけ、見せるだけでなく、使えるネクタイをPRすることも需要促進のためには良策といえるのではないだろうか。